映画『ブルージャスミン』レビュー|ケイト・ブランシェットが魅せた崩壊と虚飾の行方

はじめに

こんにちは、元ナースのメロン提督よ。
今日は映画レビューをお届けするわ。わたくしの映画レビューは貴重よ!テーマはウディ・アレン監督の『ブルージャスミン』(2013年)。上映時間は98分。主演はわたくしの大好きなケイト・ブランシェット。彼女の横顔に心を奪われて、この映画を手に取ったの。白とブルーを基調にしたジャケットの美しさ、そしてブランシェットの気品ある横顔……。もうパッケージを眺めただけで「観るしかない!」と感じてしまったのだわ。

ケイト・ブランシェットという女優について

まずは主演のケイト・ブランシェット。1969年生まれ、オーストラリア出身の実力派女優よ。舞台からキャリアを積み、『エリザベス』(1998年)で一躍スターダムにのし上がった。知的で品格にあふれる姿から、圧倒的に崩れ落ちる姿まで演じ分ける振れ幅が最大の武器。
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのガラドリエル役では神秘的な存在感を放ち、『アビエイター』でアカデミー助演女優賞を受賞。そして『キャロル』では繊細で大胆な愛を体現し、多くの観客を魅了した。その彼女が『ブルージャスミン』で挑んだのは、すべてを失い精神が崩壊していく元セレブ。美と狂気の境界を突き破るような演技で、堂々とアカデミー主演女優賞を勝ち取ったのも当然だと言えるわね。

『ブルージャスミン』のあらすじとキャスト対比

セレブと転落 ― ジャスミンとハル

ジャスミン(ケイト・ブランシェット)は、実業家ハル(アレック・ボールドウィン)の妻として贅沢三昧の日々を送っていた。ハルは社交界の王のように振る舞い、金も女も思うまま。けれど、その華やかさの裏は違法だらけ。逮捕と同時にすべてを失い、ジャスミンは崩壊の道を歩むことになる。ここで浮かぶ対比は「虚飾で満たされた夫婦の関係」。ジャスミンが彼に依存し続けたことで、自分の足で立つ力を失っていたのよ。

セレブと庶民 ― ジャスミンとジンジャー

すべてを失ったジャスミンは、妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)の元に転がり込む。ジンジャーはシングルマザーで、質素ながら地に足のついた暮らしをしている。ここでも鮮やかな対比が描かれるわ。ジャスミンが「ブランドバッグ」を手放せないのに対し、ジンジャーは「子どものための食費」を最優先する。姉が現実を見られない一方で、妹は等身大の幸せを生き抜いているの。ホーキンスはそんな庶民的な力強さを自然体で演じていて、ブランシェットの浮世離れした存在感を際立たせるのよ。

嘘と真実 ― ジャスミンとドワイト

新しい未来を夢見るジャスミンは、パーティで外交官ドワイト(ピーター・サースガード)と出会う。彼に過去を打ち明けられないまま、嘘を重ね、結婚の約束まで取り付ける。けれど偶然の再会が運命を壊すのよ。ジンジャーの元夫オーギーに真実を暴かれ、ジャスミンの作り上げた「虚像」は一気に崩れ去る。ここで描かれるのは「誠実に生きる者」と「虚構にすがる者」のコントラスト。ドワイトの存在は、ジャスミンが真実を直視できなかった象徴なのだわ。

メロン提督の視点 ― 対比から見えるもの

この映画の面白さは、ただ一人の女の転落を描くだけじゃないの。

  • 金と地位を持ちながら中身は空っぽのハル

  • 庶民でも自分らしく生きるジンジャー

  • 真実を知らず、夢を与えるドワイト

ジャスミンを取り巻く人物たちが「人間の生き方のコントラスト」として配置されているの。
彼らとジャスミンを比べることで、観客は嫌でも自分に問いかけるのよ。
「私はどちら側だろう?」って。

ブランシェットの演技はもちろん圧巻。でも彼女を引き立てたのは、アレック・ボールドウィンの軽薄さ、サリー・ホーキンスの芯の強さ、ピーター・サースガードの誠実さ。
この組み合わせこそが、ラストシーンの衝撃をより深いものにしているのだわ。

映画を観る前の期待と予想

正直に言うと、事前にあらすじはチェックしなかったの。私が思っていたのは、よくある「セレブが転落し、すべてを失ったあとで本当の幸せに気づく」ストーリーか、あるいは「一度転落するも再び這い上がってスカッと大逆転」という外国映画にありがちな展開ね。

……でも実際に観てみたら、まるで真逆!ジャスミン(ブランシェット)は最後まで幸せにならない。むしろどん底のまま、さらに深く落ちて映画は幕を閉じるのよ。

ラストシーンの衝撃

観終わったあと、私はこうつぶやいたわ。「なんて残酷で、なんて切ないのかしら…」と。

ラスト、ジャスミンはすべてを失い、公園のベンチに座って独り言を延々とつぶやく。髪は乱れ、化粧も崩れ、涙で顔はボロボロ。美しさの象徴だったブランシェットが、見る影もなく壊れていく姿。隣に座っていた女性も、その異様さに耐えられず立ち去ってしまう。そして、静かに流れるエンドロール。後味の悪さに思わず苦笑いすらこぼれたわ。でも、そこがまたウディ・アレン監督の意地悪で巧妙な演出。観る者に問いを突きつけるような幕切れだったの。

『ブルージャスミン』のあらすじ

栄光から転落へ

ジャスミンはハルという大富豪の妻。ブランドに囲まれ、社交界の花として生きてきたわ。でも夫ハルの商売は真っ黒。違法行為が暴かれ逮捕されると、すべての財産が消え去る。夫も、息子も、地位も……ジャスミンの生活は音を立てて崩壊していったの。

妹ジンジャーとの再会

居場所を失った彼女が頼ったのは、庶民的な暮らしをする妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)。血は繋がっていないけれど、唯一受け入れてくれる存在だったのね。シングルマザーのジンジャー宅に転がり込んだジャスミンは、そこで新しい生活を始めることになるの。

セレブから労働者へ

インテリアデザイナーを目指すと口では言うものの、パソコン操作すらままならない。生活のために歯科医院の受付で働き始めるが、院長に迫られてしまい拒絶。その結果、職も失ってしまう。

偽りの婚約

ある日パーティでエリート外交官のドワイトと出会い、恋に落ちるジャスミン。過去を偽り、完璧な女性を演じる彼女にドワイトは結婚を申し込むの。でも運命は残酷ね。街で偶然、妹の元夫オーギーと再会し、すべての嘘が暴かれてしまうのよ。

メロン提督のぶっちゃけ感想 ― 崩壊する女にゾクゾクしなさい!

この映画を観ながら私は思ったの。
「人間って、どれだけ磨き上げても“地金”は隠せないのね」って。

ジャスミンは、ブランド服も豪邸も地位も全部失った瞬間に、自分を支えていた“虚飾”がごっそり剥がれ落ちた。残ったのは、不安定で、プライドだけが空回りする女。見ていて痛々しいけど、その痛みがリアルだから観客は釘付けになるのよ。

そしてね、ここが大事。
ジャスミンは「庶民の生活」を受け入れられなかった。妹ジンジャーの暮らしを見下し続け、素直に助けを求めることもできなかった。だからこそ救われなかったのよ。これはただの転落物語じゃないわ、人間の弱さをエグる社会派ドラマなの。女王様の私から見てもね、ケイトの演技は圧倒的。泣き崩れる姿にすら美学がある。これ、ただのメロドラマじゃなくて「精神のホラー映画」よ。観ているあなた自身も、もし明日すべてを失ったら……ジャスミンのようにならないと断言できるかしら?ふふ、怖いでしょう?

まとめ ― 崩壊の果てに残る問い

『ブルージャスミン』は、決して気持ちよく観られる映画ではないわ。むしろ観終わったあとに胸が重くなる。だけどその「重さ」こそが作品の魅力。観客に「幸せとは何か?」「人は本当に変われるのか?」を考えさせるのだわ。ウディ・アレン監督は皮肉屋よね。観客に甘い夢を見せるのではなく、現実の残酷さを突きつける。その冷徹さに痺れたわ。ケイト・ブランシェットが見せたのは「美の崩壊」と「人間の脆さ」。この映画はただのドラマではなく、一種の心理ホラーにすら思えた。観るのは覚悟がいるけれど、女優ブランシェットの真骨頂を堪能できる一本よ。

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